エステサロンが化粧品を販売するときには、基本的にラインナップ購入することを提案することがカウンセリングの定石ではあります。しかしなかなかそううまくいかないことも現実です。エステ顧客の中には「お気に入りのコスメブランドがある」「予算がない」「本当にいいのか、まず一アイテムを使ってから判断したい」と思われる方が多いからです。その場合、購入する化粧品アイテムの優先順位をつけてあげることも、エステティシャンの大切な役割なのです。
弊社はエステサロンオーナーと打ち合わせを行うとき、「OEM化粧品をまず一アイテムつくりたいが、どのアイテムからつくるべきか?」「仕入れをしている物販化粧品の中で、どのアイテムから優先的に売るべきなのか?」といったテーマが現れます。その場合私たちは、クレンジングや洗顔化粧品を優先するべきだとお伝えすることがほとんどです。
【目次】
1.エステサロンがクレンジング・洗顔化粧品をまず販売強化する理由
2.クレンジングや洗顔化粧品をOEM開発する上で知っておくべき界面活性剤
3.今回のまとめ
エステサロンがクレンジング・洗顔化粧品をまず販売強化する理由
上記の理由はいたってシンプルで、クレンジングや洗顔化粧品で、肌はもっとも変わりやすいからです。例えばメイクや脂が浄化できず肌に堆積した場合、肌表面から大量の活性酸素が発生することで老化が一気に促進されますし、余計な角質がターンオーバーされることなく、角質肥厚を誘発し、その結果肌内部に化粧水や美容液がまったく浸透せずにごわごわな皮膚を形成する原因にもなるのです。つまりクレンジングや洗顔化粧品は、エステのフェイシャル施術で綺麗に整った肌を自宅でしっかりとキープする役割を果たしているのですが、そもそも肌に溜まったメイク剤や脂をしっかりと落とす役割の成分は一体何なのでしょうか?その成分とは、界面活性剤なのです。
界面活性剤とは、ひとつの分子内に油でなじみやすい部分(親油基または疎水基)と水になじみやすい部分(親水基または疎油基)の両方の性質をもっています。界面活性剤はこの性質を利用して洗浄・乳化・可溶化・浸透・分散する働きがあるのです。
乳化というと、O/W型・W/O型などがあります。そもそも乳化とは油と水が細かい粒子になって分散することで、油と水が完全に溶解しているわけではなくて、界面活性剤の働きで水の中に油が分散しているO/W型の状態なのか、油の中に水が分散しているW/O型の状態のどちらかなのです。乳製品でいうと、牛乳がO/W型(化粧品でいうと乳液やクリームです)・バターがW/O型(化粧品でいうとウォータープルーフの日焼け止めです)ということになります。
クレンジングや洗顔化粧品をOEM開発する上で知っておくべき界面活性剤
また一言で界面活性剤といってもその種類は4つありますから、特にOEM化粧品開発を行うエステティックサロンは、細かく把握しておくことが必要です。まず陰イオンであるアニオン型界面活性剤ですが、これは水に溶ける親水基の部分が陰イオン(アニオン)となっています。アニオン型界面活性剤は、洗浄・可溶化・乳化助剤として使われ、主にシャンプーや洗顔料に配合されています。成分例として高級脂肪酸石鹸・ラウリル硫酸ナトリウム・ラウレス硫酸ナトリウム・N―アシルアミノ酸塩・アルキル硫酸エステル塩などがあり、皮膚刺激は比較的弱いものとされています。陽イオンであるカチオン型界面活性剤は、水に溶ける親水基の部分が陽イオン(カチオン)になっています。カチオン型界面活性剤は、柔軟・帯電防止・殺菌を目的に用いられており、トリートメント・コンディショナー・リンス・制汗剤などに配合をされています。成分例としては、ベンザルコニウムクロリド・ベヘントリモニウムクロリド・塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどがあり、皮膚への刺激はやや強めになります。水に溶けるとphによって陽イオン・陰イオンに変形する両性イオンアンホ型界面活性剤は、ベビー用のシャンプー・リンスなどに含まれていて、洗浄や乳化助剤の役割を持ちます。成分例としてコカミドプロピルベタイン・アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどがあり、皮膚への刺激はかなりソフトといえるでしょう。またこれら3種がイオン性の界面活性剤に対し、唯一非イオンのノニオン型界面活性剤は、水に溶けてもイオン化がしないので、他の界面活性剤と組み合わせがしやすいことでも知られています。ノニオン型界面活性剤は、乳化・可溶化を促進するため、化粧水・乳液・クリームといった美容効果の要となる化粧品にも多く使われているのです。成分例としては、ステアリン酸グリセリル・PEG60・水添ヒマシ油などがあり、肌への刺激はほとんどないといわれています。
今回のまとめ
「界面活性剤がフリー」という文言をOEM化粧品やエステティックブランドのメーカー化粧品の広告で見かけることがありますが、メイクなどの油性の汚れや肌に溜まったタンパク質を落とさないといけないクレンジングや洗顔化粧品においては、このような文言は科学的に成立することはありません。
つまり品質が高いクレンジングや洗顔化粧品というものは、界面活性剤の品種やその含有量・配合比率が使用対象者の目的・肌質にしっかりと調整された商品であるということなのです。