エステサロンは集客で売上を上げ、独自性がある施術や物販を行うことで新規リピート率や単価を上げ、業績の成長性・安定性を上げることが経営をより良くしていくわけですが、業績が伸長すればその分経営に対するリスクは上がります。私たちが属しているエステティック産業は、「顧客の身体に触れその管理を預かる産業」ですから、こういったリスクは他産業に比べて高いと考えたほうが健全です。具体的には景品表示法・特定商取引法だけでなく、薬機法・医師法などの法規制を犯すと業務停止・課徴金の支払いリスクなどが発生し、そうすることで事業を存続することが難しくなるのです。エステサロンの経営は、Webマーケティングでしっかりと集客を行わなければいけませんし、集客した顧客に対し、カウンセリングや施術・化粧品のPRを行い、育成することが重要です。つまりオンライン・オフラインの双方で他店との差別化・エステメニューの強み・取り扱いサプリメントや化粧品の優位性を広告する必要がありますから、マーケティング上で用いるすべての媒体を、しっかりとリスク管理しなければいけません。今回のコラムでは、エステ業界で広告を行うのであれば周知するべき「医薬品、医薬機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」である一般的には「薬機法」といわれる法律について、エステの実務に絡めながら概要に触れていきたいと思います。
【目次】
1.エステサロンのマーケティングリスク。薬機法の摘発事例
2.化粧品の販売・広告に携わるエステサロンの責任と使命について
3.今回のまとめ
エステサロンのマーケティングリスク。薬機法の摘発事例
2022年8月から施行された「薬機法」の改正により、エステサロンのみならず、美容商材メーカー・卸業者・広告代理店・インフルエンサーなどの動きが慌ただしくなっています。これは「薬機法」の改正がただの布告でなく、自身のサービス形態が崩壊する原因になるということを、リアリティをもってイメージしているからではないかと思います(事実私たちもそう思っています)。私たちの調べでは、2022年8月の以前から摘発の基準や罰則の重度は徐々に厳しくなっており、そのせいで美容事業者が逮捕されたニュースなどを目や耳にする機会が増えたように思います。例えば2020年7月に「ズタボロになった肝臓が半年で復活」などと標榜した(明らかに医薬品的効果効能のため違法)健康食品通販会社の従業員を逮捕しましたが、薬機法は「何人も罰則対象者」が原則でありますので、広告主だけでなく広告代理店である某企業の従業員が5名逮捕されるに至りました。また2021年3月には、更年期障害・糖尿病の予防や改善に効くサプリメントだと商品紹介し、当然これは違法で広告した男性が逮捕に至ったのですが、逮捕された男性は広告主の企業に在籍しているわけではなく、委託された第3者であるアフィリエイターだったのです。
化粧品の販売・広告に携わるエステサロンの責任と使命について
このような案件をメディアで知ってしまうと、「やりにくい業界だな」「なんで私たちだけ」
という思いにかられることもありますが、しっかりとした大義があるため、私たちはこれらを遵守しないといけませんし、こういった規律を守ることにより悪質な事業が淘汰されることを促進していかなければなりません。抗体医薬品・再生医療といった薬学・医学の分野は目覚ましい進歩を遂げていますし、そういった流れから化粧品原料の品質・サプリメント成分のエビデンス・エステティシャンの施術教育レベルもどんどんと上がっています。法律や薬となると、医学の分野ではない私たちとは無縁の話のように聞こえますが、薬機法の規制対象物は医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の5つが該当するわけですから、広告・販売に携わるエステ経営において、薬機法の理解やそれに則る運営は、やらなければいけないことなのです。
今回のまとめ
いいエステサロンには強みとなるフェイシャルやボディ手技がありますし、いい化粧品やサプリメントを物販アイテムとして取り扱っています。例えばそれが化粧品の場合、薬機法上56の広告表現に限られてきます。いい化粧品にはしっかりとした製品としての理論が備わっているため、肌と化粧品のシナジーを、56の表現に則り購買意欲の訴求・情緒的価値の向上をマーケティングとして戦略的に行う必要があるのです。