前回のコラムでは、「ある程度の失客に備えた集客動線の確保」がエステサロンには必要不可欠なマーケティング戦略である。と、そうお伝えいたしました。これは如何にも当たり前という経営論理ではありますが、周囲からはあまり集客動線構築への緊急性や重要性が感じられないことも確かです。例えば、「高機能な痩身機械を導入しました」「海外のフェイシャルピーリングブランドを導入しました」「コンサルティング会社から人材教育プログラムを購入しました」など、中々のコストが想定できるような投資案件を聞くことは多いのですが、こと集客に関する肝いりの投資案件については、私も長年この業種に携わりながらあまり耳にしたことはありません。それはなぜなのでしょうか?私たちは、原因を二つだと捉えています。一つは、優先順位の誤った認識・もう一つは、正しい方法がブラックボックスであるために、何をやればいいのかがわからないという、あくまで外的な要因です。列挙した点を軸に、エステサロンが行うべき集客に関するマーケティング戦略を、本コラムではお伝えいたします。
【目次】
1.既存顧客第一主義の副作用は、既存顧客の離脱を誘引することである
2.サロン集客は、「何もしない」「網羅的に施策を行う」どちらも不正解
3.エステサロンのWebマーケティング戦略は、オウンドメディア一択
4.今回のまとめ
既存顧客第一主義の副作用は、既存顧客の離脱を誘引することである
会社員時代に、私が重点的に教育を受けた内容の一つとして「エステサロンは既存顧客を育成することがもっとも重要である」という教えがあります。もちろんこの教えに誤りはありませんし、エステという物理的・心理的距離感の近い関係性を伴う商売を行う上で、長期間通い続けるお客様をもっとも大切にすることは、高尚な心構えであると私もそう思います。しかし一方で、この既存顧客第一主義といわれるものは、長年過剰に強調をされ続けたり、歪曲した行動に結びつけられる教えが広まったりと、経営に対し不良な効果を働くようにもなりました。具体的には、既存顧客が月間使用する美容コストがあまりにも上昇することに経済的・精神的に耐えられることができなくなり、結果として離脱を招くという現象です。この作用においてリスキーなのは、「経営者が顧客のアラームに気づきにくい」ことです。既存顧客の月間使用する美容コストが上昇するということは、「顧客単価が上がること」すなわち「顧客の満足度及びサロンのポジショニングが上昇した」と経営分析されることが一般的だからです。しかし長年通い続けるお客様だからこそ、提案される施術や店販商品はすべて購入してあげたいという感情は一時的に湧き出るものですし、蓄積した自らの行動か不満へと感情変化していることは、とても言葉にできないものです。またエステサロンの経営とは、引っ越しや体調不良などお客様が意図しない失客が恒常的に生じます。戦略的な集客を行わないということは、新規の集客は毎月0とみなすことを意味しますから、抜けたお客様の売上金は、別の既存顧客でまかなわなければなりません。あくまで私の主観ですが、エステティシャンは平均的にコミュニケーションスキルに長けており、対人営業スキルも優秀な方々が多いように思います。しかし顧客育成の一環として取り組んだ提案やカウンセリングが、顧客離脱を誘引してしまったというケースは珍しくありません。私たちはこの問題の抜本策として、提案やカウンセリングの決定率向上を掲げる業界の風潮には懐疑的です。前述を言い換えると、どんなに優秀なエステティシャンでも、緩やかな顧客減少を止めることはできません。であれば、失客に備えた集客動線を確保することが、エステサロン経営にとって何よりも大切なことなのです。
サロン集客は、「何もしない」「網羅的に施策を行う」どちらも不正解
言わずもがな集客とは、「まだ店舗実態を知らない見込み顧客を獲得する」ことですから、経営において難易度がもっとも高い分類の取り組みだといえます(口コミ・紹介を除いた集客)。そしてたちまち獲得すれば、長期間の安定した売上が望めるわけですから、投資する労力やコストが高くなってしまうのは当然のことだといえます。労力やコストが高くなるのであれば、それを基幹とする戦略は経営上もっとも重要なことであり、闇雲に試行錯誤を繰り返せば、経営破綻する可能性さえ十分にあるのです。しかし導入部分でも触れたように、「集客に何をやればいいかわからない」というのが、エステサロン経営者の大半の声として耳にしますし、私も会社員時代、この疑問に答えた経験は正直ありませんでした。エステサロンを経営サポートしますという多くの企業は、経営にとって優先順位がもっとも高いといえる「集客」のしっかりとした情報の備えを、案外持ち合わせていないのです。「何もしないこと」はリスクですし、「わからないから網羅的に施策を行う」ことでは、成功する前に資金や体力が尽きてしまいます。ですから正しい集客戦略を選択し、あとは道路工事のように地道に動線を構築するまで「つくりこむ」ことでしか、継続安定した新規の送客を実現することは不可能です。これから記述することは、集客戦略の選択方法についてです。
エステサロンのWebマーケティング戦略は、オウンドメディア一択
まず、選択肢云々の前に、デジタルトランスフォーメーションが近年これだけ声高に叫ばれているわけですから、Webマーケティングこそが重要であるという内容は、割愛いたします。Webマーケティングの戦略選択肢は、よく「トリプルメディア戦略」となどといわれているように、オウンドメディア・ペイドメディア・アーンドメディアの3つに分かれています。弊社がクライアントであるエステサロンと掲げる目標は「中長期の経営に効果的な集客」の獲得ですから、この3つの選択肢に優先順位をつけています。まずもっとも優先順位が低いのは、アーンドメディアです。しかしこのアーンドメディアは、ほとんどのエステサロンにおいて過去・現在の中心的な集客コンテンツになっています。アーンドメディアを運営するのは所謂ポータルサイトなのですが、このポータルサイトはインターネット上で年間予約数が1億人を超えていますし、競合店舗もまとめて一覧化されてはいるものの、検索上位に表示されているため、アクセス数が多い。つまり広告閲覧数がある程度保証されているわけですから、活動や投資を割り当てる甲斐は感じやすいわけです。しかしながら弊社はクライアントであるエステサロンに、アーンドメディアの媒体活用をそもそも推奨しておりません。そのもっとも大きな理由は、請求コストの上昇率にあります。少なくとも直近5年間データによると、ポータルサイトによるサロンの広告請求コストは年間で15%ずつ上昇しています。たかだか15%か。と、考えるのは危険です。15%ずつということは5年間対比で75%。つまり倍近いコストがエステサロンには費やされています。国内エステサロンの総売上規模はここ10年間で3,500億円近辺の横ばいです。そしてポータルサイトの登録店舗は年々上昇しています。つまり広告による売上効果は緩やかに下降しているにも関わらず、コストは5年間対比で175%ですから、アーンドメディアに依存する・もしくはこれから参入するという選択は、私たちはリスクであると考えています。しかしこういった状況でも、なぜ登録店舗は増加する一方で、脱退する店舗は少ないのでしょうか?それは投資対効果の過去エビデンスがあり意思決定がしやすいことや、コストが割に合わない僅かな集客数をリセットしたくないというメンタル的な要素が働いているのだと思います。経営判断が簡易ということは、競合店舗と過当競争になり、その末にコストパフォーマンスの不健全化を招く恐れがあるということです。何度も繰り返すのですが、今エステサロンでアーンドメディア戦略を強化選択されるということは、間違いであると私たちは考えています。そして次にペイドメディア。これはその名の通り有料であるリスティング広告やバナー広告で認知を一気に獲得し、マネタイズを目指す広告戦略です。私たちは、アーンドメディアよりはペイドメディアの方が利用価値はあると考えていますが、基本的には必要ありません。ペイドメディアがもっとも価値を発揮する領域は、例えば自動車メーカーの新車販売戦略などです。もともと一定の認知がある企業やブランドの新商品告知などは、そもそも購入履歴のある買い替えの確度の高い顧客を保有しておりますし、単価も高い商品であれば、投資対効果の目標は達成されやすいといえます。エステサロンは基本的には地域ビジネスであり、顧客ごとの売上は経時的に向上する性質です。ですから競合店舗から顧客を獲得しやすいような「最新の機械を導入した」のようなケース以外に、ペイドメディアは活用しにくいことは事実です。またコストの上昇率の視点でいうと、検索エンジン上のリスティング広告も年間で約33%ずつコストアップしているのです。
長々とした前提となりましたが、結論としてはオウンドメディア。つまり自社ホームページを構築し、数多くの検索ボリュームからのアクセス数を上げることに努力を注ぐことこそが、もっともシンプル且つ、中長期的に経営メリットを享受できる戦略であり戦術なのです。
今回のまとめ
弊社の心がけるマーケティングサービスは、「あらゆることにチャレンジする」ことではなく、「しないことを先に決める」ことが前提です。プライベートエステサロン様の業績を上げることがミッションである私たちは、資金や時間をショートすることなく、確実に成果を上げる戦略を示し、共に伴走する姿勢をこれからも変えることはありません。